自治体の生成AI導入事例9選|業務効率化のポイントやサービスの選び方を解説

活用事例 生成AI

最終更新日:2025/4/24

生成AIは、企業だけでなく自治体における業務効率化やDXの推進に大きく貢献します。実際に、住民サービスの品質向上や職員の負担軽減といった目的に向けて、生成AIを導入する全国の自治体も登場しています。

本記事では、自治体における生成AIの活用について、導入状況やメリット、注意点を詳しく解説するとともに、全国の導入事例を紹介します。生成AIが役立つ用途やシーンについて知り、導入・運用を成功させるためにぜひご覧ください。

 

生成AIとは?特徴とできること

生成AIとは、膨大なデータを学習し、パターンを認識して新しい文章や画像、動画、音声などのコンテンツを生成するAI(人工知能)技術です。従来のAIは、データの「検索」や「予測」が得意でしたが、生成 AI はゼロからオリジナルのアイデアを「創出」できる点が最大の特徴です。特に自然言語処理の能力が高く、私たちが普段使っている言葉で指示を出すだけで、人間が書いたような比較的自然な文章をスピーディーに作成してくれます。その他にも、プログラミング言語やアートなど、あらゆるジャンルの膨大な知識をAIが学習し、独創的なコンテンツを作り出します。

生成AIについて、詳しくは下記記事で解説していますのであわせてご覧ください。

【関連記事】生成 AI とは?モデルの種類や仕組み・活用事例・メリットを解説

自治体で生成 AI はどの程度導入されている?

総務省の「自治体における生成AI導入状況(令和7年6月30日版)」によると、⽣成AIを導⼊済みの団体は、都道府県で87.2%、政令指定都市では90.0%に達しています。
これに対し、その他の市区町村では29.9%**にとどまり、自治体の規模によって導入状況に差があることが示されています。

また、実証中・導入予定を含めると、都道府県・指定都市は100%、その他の市区町村でも51%が導入に向けて取り組んでおり、特に小規模自治体においては「導入の入り口(実証・検討)」が広がりつつある状況がうかがえます。今後は、導入済み自治体で進む体制整備や運用上の工夫(ルール整備等)の知見を横展開し、自治体間での共有・浸透を加速させることが期待されます。

参考:総務省「自治体における生成AI導入状況(令和6年7月5日版)」

日本各地の自治体で生成AI活用が求められている背景

近年、多くの自治体で生成AIの導入検討が進んでいます。背景には、自治体が直面している構造的な課題と、国全体でのデジタル化の波が大きく関係しています。ここでは、自治体が生成AI導入に動き出している主な3つの理由について解説します。

参考:総務省「地方自治体におけるAI・ロボティクスの活用事例」
参考:総務省「自治体におけるAI活用・導入ガイドブック」

業務効率化とコスト削減のため

少子高齢化が進む中、近い将来に自治体職員が大幅に減少するという「2040年問題」と呼ばれる予測が発表されています。特に地方自治体では、若い世代の人材不足が深刻化し、技能継承が大きな課題になっています。限られた人員でこれまで通りの行政サービスを維持し続けるには、物理的に限界を迎えつつあるのです。このような状況下で、職員一人あたりの生産性を劇的に向上させる手段として生成AIが注目されています。

たとえば、企画書や議事録の作成・要約といった時間を要する定型業務をAIに任せることで、職員は人間にしかできない判断や対人業務に集中できるようになります。人手不足を補いながら行政サービスの質を維持するための解決策として、生成AIへの期待が高まっているのです。

参考:総務省「自治体戦略2040構想研究会 第8回 事務局提出資料」
参考:総務省「自治体戦略2040構想研究会 第二次報告」

多様化する住民サービスへ対応するため

住民ニーズの多様化と複雑化も、生成AI導入を加速する理由の一つです。従来の画一的なサービス提供だけでは、個々の住民が抱える複雑な課題に対応しきれないケースが増えており、夜間や休日における問い合わせ対応など、利便性の向上を求める声も強まっています。例えば、生成AIを活用したチャットボットなどを導入すれば、24時間365日、住民からの問い合わせに即座に対応できるようになるでしょう。多言語対応も比較的容易になるため、在留外国人へのサポートも充実させられます。限られたリソースの中で住民一人ひとりに寄り添ったサービスを提供するためのツールとして、生成AIの活用が進められているのです。

【関連記事】AIチャットボットとは?仕組みや導入メリット・おすすめサービス5選

DX推進や自治体のスマート化のため

国が自治体のDX(デジタルトランスフォーメーション)を強力に推進していることも、導入を後押しする大きな要因です。総務省やデジタル庁は、自治体におけるAI活用のガイドラインを策定し、先進的な取り組みを行う自治体を支援する姿勢を明確にしています。また、IT技術やAIを活用した「スマート自治体」への転換が全国的に進められる中で、生成AIは中核技術としても注目が集まっています。

行政のDXは民間に比べて遅れていたものの、コロナ禍を経てその重要性が広く認識され始め、導入を後押しするきっかけになりました。生成AIにより行政サービスの迅速化や効率化が実現し、より住民目線の政策立案や運営に役立つと期待されています。

参考:「行政の進化と革新のための生成AIの調達・利活用に係るガイドライン」を策定しました|デジタル庁

全国の自治体における生成AI導入事例9選

ここからは、実際に生成AIを導入した自治体の成功事例を9個厳選して紹介します。各自治体における導入目的や活用方法、成果や評価などをまとめていますので、生成AIの活用に向けて参考にしてみてください。

参考:総務省「自治体における AI活用・導入ガイドブック」
【関連記事】業務効率化を促す生成AIの活用と選び方|業務別の生成AIの活用法12選

横須賀市:全国の自治体に先駆けて全庁でChatGPTを導入

神奈川県横須賀市は、全国でもいち早くChatGPTを全庁で導入し、業務効率化や市民サービス向上に取り組み始めた自治体です。2023年4月に全庁的な活用実証を開始した後、文書作成やリサーチ、アイデア創出といった幅広い用途で活用されています。

アンケートでは、職員の約半数が利用し、8割以上が「効率が上がった」と回答しており、職員のデジタルリテラシー向上や意識改革、庁内のDX推進など部署横断的な波及効果も生まれていると言えます。

さらに、職員研修やプロンプトコンテストなど、独自の施策も実施しながらAIを使いこなせる人材育成にも注力しています。ChatGPTの活用は、市民にも好意的に受け止められており、「生成AI開国の地」として他の自治体とも知見を共有していく意向を示しています。

参考:「生成AI開国の地」横須賀市、ChatGPTで業務効率化を推進(自治体インタビュー)|まちの掲示板|一般社団法人 自治体DX推進協議会
参考:自治体初!横須賀市役所でChatGPTの全庁的な活用実証を開始(2023年4月18日)|横須賀市

つくば市:生成AIによる政策立案で市民の声の可視化

茨城県つくば市では、生成AIを活用して市議会の議事録や市民の声を分析し、政策提言に活かす仕組みを整備しています。2023年から庁内で「生成AI検討グループ」を発足し、筑波大学と共同開発したチャットボット「けんじくん」もLoGoチャット上で運用するなど、積極的なAI活用を進めていました

今回のシステムは、筑波大学ヒューマン・スマートシティ研究機構と連携して開発され、AIが重要キーワードの抽出やダッシュボード表示などにも対応します。職員の働き方改革と住民サービスの高度化を並行して進めつつ、市民ニーズの可視化を通じた効率的な政策立案を目指しています。

参考:つくば市における生成AI導入の経緯について|つくば市情報政策課

美祢市:観光用生成AI「ミネドン」

山口県美祢市は、観光情報を提供する生成AIチャットボット「ミネドン」をリリースしました。美祢市内の観光スポットや特産品、宿泊情報などの情報を、美祢市の公式キャラクター「ミネドン」との会話形式で手軽に受け取れます。

自治体キャラクターが音声で観光案内する生成AIとしては、国内で初めての事例です。美祢市観光協会のWeb情報をベースにした機械学習が用いられており、テキストや音声で情報を得られます。

美祢市では、デジタル住民票NFTの完売実績などIT活用による地域活性化に注力しており、観光AIガイドの先進的なモデルとしても注目を集めています。

観光AIガイドの先進的なモデルとしても注目を集めています。

観光AIガイドの先進的なモデルとしても注目を集めています。

参考:ミネドンと音声会話できる観光ChatGPTについて – 【公式】山口県美祢市 秋吉台国定公園 観光情報
参考:HEXA(ヘキサ) | 日本最大級のNFTマーケットプレイスH3:神戸市:生成AIを使ったサービスデザインの検討

神戸市:生成AIを使ったサービスデザインの検討

兵庫県神戸市では、2023年度から生成AIの試行をスタートし、2024年2月には全職員約1.2万人を利用対象とした「Microsoft Copilot」を導入しました。ICTツールによる業務改善を進めるデジタル戦略部が中心となって、AI活用に力を入れています。

活用事例としては、広報紙の作成におけるペルソナ分析やカスタマージャーニー考案、市民向けアンケートの自動生成、人事評価での考課調書作成支援など多岐にわたります。導入後は、住民のニーズに応じたサービス・政策提案の精度やスピードが向上し、職員の業務負担軽減や標準化にも役立っています。

AIを活用したサービスデザインにより、市民に寄り添った行政の実現を目指しています。なお、神戸市は2023年5月に全国に先駆けて生成AI利用ルールを定めた条例を制定し、さらに2024年3月には全国初となる包括的なAI条例「神戸市におけるAIの活用等に関する条例」を制定、2024年9月から施行されています。

参考:総務省「神戸市におけるAIの活用とルール整備」

さいたま市:保育所選考の業務を生成AIで自動化

埼玉県さいたま市は、保育所入所選考の膨大で複雑な業務にAIマッチング技術をを導入しまし、市内の児童約8千人分の選考作業が、わずか数秒で完了するようになりました。

富士通と九州大学の研究チームによるAIマッチング技術を搭載したシステムでは、兄弟の同時入所など複雑な条件を踏まえつつ、ゲーム理論を活用して最適な割り当てを自動算出可能です

人間で行っていた作業とほぼ100%の精度を達成しており、職員の作業負担と心理的ストレスを大幅に軽減しています。また、選考結果が早期に確定するため、申請者の職場復帰計画などもスムーズに進むなど、相乗効果も期待されています。

参考:総務省「AIによる保育所入所選考マッチング(さいたま市)」

戸田市:ChatGPTで労働時間の削減を実現

埼玉県戸田市は、行政向けネットワーク環境下で全職員に ChatGPT IDを配布し、生成AIによる行政業務の効率化を推進しています。2023年11月には約300万文字をAIで生成し、約500時間分(225万円相当)の労働時間の削減を達成。月額利用料11万円に対し、高い費用対効果を上げました。

また、市民向けにAI総合案内サービスを導入し、子育てやごみ出しなどの問い合わせに24時間の自動応答を実現しています。2023年12月からは、チャットや音声のAI対応実証実験を開始し、職員が内容を確認するなど安全面も確保しています。

加えて、川口市と共同でAIによる申請支援・審査システムの開発や、生成AIの導入効果とリスクの検証にも取り組むなど、積極的な活用を促しています。

参考:戸田市におけるAIの取り組み – 戸田市公式サイト(デジタル戦略室)

湖西市:SNS投稿の文章生成に生成AIを活用

静岡県湖西市は、住民向けのSNS投稿文やイベントの案内文を作成する際に、ChatGPTなどの生成AIを活用しています。導入費用は月額約7万円で、2023年7月から2024年2月の短期間で約800時間分の業務時間削減という成果を上げています。

生成AIの導入自体は、職員発案によるボトムアップ型で、上層部の理解とDX推進アドバイザーの後押しによって運用が実現しました。複数の生成AIサービスを用途別に使い分け、多くの職員が業務に活用できる環境が構築されています。

また、仕様書や議事録、広報画像の生成など幅広い用途で生成AIが利用されています。今後は、利用の少ない部署への働きかけやITリテラシーの向上に向けた施策を実施しながら、生成AI活用を全庁的に推進する方針です。

参考:総務省「静岡県湖西市 生成AI利用状況」
参考:静岡県湖西市、ChatGPTを解禁 SNS投稿文の提案などで – 日本経済新聞

別府市:生成AIとRPAによる業務効率化

大分県別府市は、生成AIとRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を組み合わせた業務効率化を進めています。2023年から本格的な生成AIの利用をスタートしており、子育て分野のチャットボットや市民からの意見メールの要約・分類などに活用しています。

市民意見メールの処理では、RPAで収集したデータを生成AIで要約・分類するシナリオにより、職員の業務負担の軽減や対応の正確性の向上に成功しています。また、約2,600件の自由記述式アンケートの分類にシステムを利用することで、従来は2週間ほどかかっていた作業がわずか2日間で完了するようになりました。

現場の職員からは、「すごく楽になった」「大幅な時間短縮ができた」といったフィードバックが出ています。

参考:「生成AI」×「RPA」を試験的に使ってみました【BEPPU×AI vol.2】|別府市デジタルファースト推進室
参考:総務省「自治体におけるAI活用・導入ガイドブック<別冊付録>先行団体事例」

相模原市:NECと協働で生成AIを導入

神奈川県相模原市は、NECと協定を締結し、国産生成AI「cotomi」を活用した議会答弁案の作成に取り組んでいます。市制70周年を迎えた市では、業務効率化と市民サービスの向上を目指したDX施策の一環として、全国初の自治体による国産生成AI活用の事例を実現しています。

取り組みでは、過去の答弁データをもとにAIが原案を作成し、言葉遣いや文体を学習させることで適切な答弁案を自動的に生成しました。NECと協働でファインチューニング(モデルの最適化)を行い、現場の要望を反映させた仕組みへと進化させています。

2024年6月の市議会より本格的に現場に導入され、労働時間の軽減や業務効率化に寄与しています。

参考:相模原市とNECが育てる生成AIに全国から熱視線 働き方改革と「暮らしやすさ」向上: NEC Stories | NEC
参考:国内自治体初 国産生成AI導入へ NECと相模原市が協定締結 | Ledge.ai

自治体が生成AIを導入する3つのメリット

生成AIの導入は、単なる業務の自動化にとどまらず、自治体運営そのものに大きな変化をもたらす可能性があります。現場の職員にとっては日々の負担軽減、住民にとってはサービスの質の向上、そして組織全体としては政策の高度化など、多面的なメリットが期待できます。ここでは、具体的にどのようなメリットがあるのかを3つの視点から解説します。

メリット1:職員の定型業務の負担を大幅に削減できる

第一のメリットは、職員が日々行っている定型業務の大幅な効率化です。自治体の業務には、議事録の作成、報告書の執筆、案内文の起案など、膨大な量のテキスト処理が含まれています。正確性が求められる一方で、非常に多くの時間を要する作業でもあります。生成AIを活用すれば、会議の録音データから自動で議事録案を作成したり、箇条書きのメモから報告書の文章を生成したりできます。職員はゼロから文章を作成する手間から解放され、AIが作成した下書きを確認・修正するだけで業務を完了できるようになるのです。空いた時間を住民相談や現場対応などのコア業務に充てることで、本来の公務員としての価値発揮につながるでしょう。

メリット2:24時間365日対応で住民サービス向上に繋がる

第二のメリットは、住民サービスの利便性の向上です。従来の窓口業務や電話対応は、開庁時間内に限られていました。生成AIを搭載したチャットボットを公式ウェブサイトやLINEに導入することで、住民は時間や場所を選ばずに質問し、必要な情報を得られるようになります。従来のシナリオ型チャットボットとは異なり、生成AIは比較的自然な対話が可能であるため、住民の曖昧な質問に対しても適切な回答を提示しやすくなります。住民満足度が向上すると同時に、窓口職員の対応件数を減らす効果も期待できます。

メリット3:データに基づいた政策立案が可能になる

第三のメリットは、膨大なデータを活用した政策立案(EBPM)の高度化です。自治体には、住民からのアンケート回答、パブリックコメント、SNS上の声など、テキスト形式のデータが大量に蓄積されています。生成AIを用いれば、こうした大量のテキストデータを短時間で分析・分類し、住民の潜在的なニーズや不満の傾向を抽出できます。また、過去の行政資料や統計データを学習させることで、新しい施策のアイデア出しや、事業計画の素案作成をサポートさせることも可能です。データに基づいた客観的な分析結果を政策に反映させることで、より実効性の高い行政運営が実現するでしょう。

まだある!自治体での生成AIの活用シーン

上記以外にも、自治体における生成AIの活用シーンや用途は多数あります。ここでは、さらに3つの生成AI活用について紹介します。

【関連記事】生成AIによる業務効率化事例21選【製造・医療・コールセンター・社内業務・教育・不動産など】

マニュアル検索

生成AIは、膨大な業務マニュアルの中から、必要な情報を瞬時に検索できます。例えば、職員の質問に対して、生成AIが自らマニュアルを検索し、適切な答えをスピーディに提示できるため、作業時間が大幅に短縮されます。

また、新人研修や異動直後の職員が抱えやすい業務に関する悩みについても、自己解決の促進が可能です。検索性の向上により、社内ヘルプデスクなどの問い合わせ対応や属人化の低減にも寄与します。

アンケートデータの集計

住民アンケートの自由記述欄の内容は、従来は人間が手作業で確認、記録するケースがほとんどでしたが、生成AIによって自動分類や要約が可能になります。

膨大なテキストデータも短時間で集計し、分析できるため、職員の集計業務の時間と手間を大幅に削減可能です。また、感情分析や傾向の可視化に対応したAIシステムを活用すれば、政策立案にも役立つでしょう。

AI-OCR(光学文字認識)の活用

AI-OCR(光学文字認識)技術の活用で、紙の申請書や帳票をスキャンし、文字データに自動変換可能です。また、生成AIと組み合わせることで、データの自動要約や分類を迅速に行えるため、手入力業務の削減や入力ミスの防止にもつながります。

また、紙文化の残る現場でAI活用を推進する手段としても有用です。

自治体の生成AI導入における課題点

自治体が生成AIを導入することで、多くのメリットが期待できる一方で、課題や問題点も残されています。ここでは、自治体における生成AIの導入・運用の課題点について説明します。

LGWAN環境でのセキュリティ対策

自治体の業務ネットワークは、セキュリティ確保のためにインターネットから分離された「LGWAN(総合行政ネットワーク)」を使用していることが一般的です。しかし、多くの生成AIサービスはクラウドベースで提供されており、インターネット接続が必須となるため導入時の最初の壁となることが多いです。そのままでは庁内PCから生成AIを利用できないため、LGWAN環境からでも安全に接続できる仕組みを構築する必要があります。現在では、LGWANに対応した生成AIサービスや、無害化通信を経由して利用するソリューションが登場しているため、導入を検討する際は、自庁のネットワークポリシーに適合した接続方法を選定しましょう。

個人情報や機密情報の漏洩

生成AIを利用する上で最も警戒すべきなのが、情報の漏洩リスクです。一般的な生成AIサービスでは、ユーザーが入力したデータがAIの学習に利用される可能性があります。もし職員が住民の個人情報や未公開の政策情報を入力してしまった場合、それがAIを通じて外部に流出してしまう恐れがあります。防ぐためには、入力データが学習に利用されない設定(オプトアウト)が可能なサービスを選ぶことや、契約でデータの取り扱いを明確にしましょう。システム的な対策だけでなく、「名は入力しない」「機密情報はマスキングする」といった運用ルールを徹底し、職員への教育を行うのもおすすめです。

誤情報(ハルシネーション)

生成AIは確率に基づいて言葉をつなぎ合わせる仕組みであるため、もっともらしい嘘をつくことがあります。この現象は「ハルシネーション(幻覚)」と呼ばれます。業務に利用する際に、正確な行政文書や案内文に誤った情報が混入する危険性があるのです。特に、法令解釈や最新の制度に関する情報を生成AIに尋ねる場合は注意が必要です。生成された回答をそのまま鵜呑みにせず、必ず職員が事実確認(ファクトチェック)を行うプロセスを業務フローに組み込む必要があります。また、AIが参照するデータベースを庁内の信頼できる資料に限定する「RAG(検索拡張生成)」ことも、回答精度を高める有効な手段です。

職員の教育・プロンプト設計

職員のAIリテラシーには個人差があり、活用にもばらつきが見られます。一部の得意な職員だけが活用し、他の職員は全く使わないという状況では、組織全体の生産性は上がりません。この課題を解決するためには、活用事例集の共有やプロンプト設計の研修といった方法が有用です。また、各部署に推進リーダーを配置するなどで、組織全体で活用スキルを底上げしていく取り組みが求められます。

総務省のガイドラインや支援制度

総務省は、自治体向けの「AI活用・導入ガイドブック」を継続的に改訂・整備しており(第4版は2025年12月公表)、自治体が作成する生成AIガイドラインのひな形も別添として提供しています。。全国の各自治体では、適切な生成AI活用のルール整備も徐々に進められており、生成AIの活用範囲や留意点を明確にし、安心して導入できる環境を整える必要があります。

また、導入初期の自治体に向けた研修・支援制度の整備も重要です。財源の少ない地方自治体などでは、政策支援や補助金の提供も、効果的なAI導入を実現するために検討する価値があります。

参考:総務省|報道資料|「自治体におけるAI活用・導入ガイドブック<導入手順編>(第4版)」の公表

生成AI導入を成功させるための4ステップ

いきなり全庁展開を目指すと失敗してしまうかもしれません。成功している自治体の多くは、段階を踏んで着実に導入を進めています。ここでは、スムーズに導入を進めるための標準的な4つのステップを紹介します。

ステップ 内容 主なアクション
 1 目的と活用業務を明確にする 導入目的の設定
活用業務の洗い出し
 2 利用ガイドラインを策定する 禁止情報の定義
セキュリティ・法務部門との連携
 3 一部署からスモールスタートする ITリテラシーの高い部署で試験導入
効果・課題の検証
 4 効果を検証し全庁展開を検討 費用対効果の検証
研修会の開催・事例共有

ステップ1:目的と活用業務を明確にする

まずは、「何のために生成AIを導入するのか」という目的を明確にします。単に「流行っているから導入する」のではなく、「議事録作成の時間を半減させる」「住民窓口の待ち時間を解消する」といった具体的な課題解決をゴールに設定しましょう。

その上で、どの業務で活用するかを洗い出します。生成AIは万能ではないため、向き不向きがあります。文章作成、要約、翻訳、アイデア出しといった生成AIが得意とする領域と、自庁の課題がマッチする業務を選定することが重要です。

ステップ2:利用ガイドラインを策定する

次に、安全に利用するためのルール作りを行います。入力してはいけない情報の定義(個人情報、機密情報など)、生成物の確認義務(ファクトチェック)、著作権への配慮などを定めた利用ガイドラインを策定します。

この段階で、セキュリティ部門や法務部門とも連携し、リスク管理の体制を整えておくことが大切です。日本ディープラーニング協会や他の先進自治体が公開しているガイドラインを参考にすると、スムーズに策定できます。

ステップ3:一部署からスモールスタートする

ガイドラインができたら、まずはDX推進課や情報システム課など、ITリテラシーの高い部署に限定して試験導入を行います。いきなり全職員に開放すると、問い合わせが殺到したり、予期せぬトラブルが発生したりする可能性があるためです。

小規模な範囲で実際に使いながら、業務フローにおける具体的な活用方法を検証し、効果や課題を洗い出します。この段階で「どのようなプロンプト(指示文)を使うと良い結果が出るか」といったノウハウを蓄積しておくと、後の全庁展開がスムーズになります。

ステップ4:効果を検証し全庁展開を検討

試験導入で得られた成果と課題を整理し、費用対効果を検証します。業務時間の削減効果や職員のアンケート結果などを基に、本格導入の可否や規模を判断します。
全庁展開する際は、職員向けの研修会を開催したり、活用事例集を共有したりして、現場レベルでの定着を図ります。また、導入後も定期的に利用状況をモニタリングし、ガイドラインの見直しや新たな活用方法の提案を行うなど、継続的な改善サイクルを回していくことが成功の鍵となります。

自治体に導入する生成AI選びのポイント

自治体で生成AIを導入する際、ツール選びは非常に重要です。民間企業とは異なり、行政機関には厳格なルールの遵守や独自の業務プロセスが存在します。数あるサービスの中から自庁に適したものを探すため、複数の観点から比較検討を行いましょう。以下に、自治体が生成AIを選ぶ際に確認すべき主なチェックポイントをまとめました。

比較ポイント 自治体における具体的な確認事項
 セキュリティ LGWAN(総合行政ネットワーク)環境で利用できるか
学習データに利用されないか
 カスタマイズ性 自治体独自のデータ(例:条例や過去の議事録)を読み込ませて
回答精度を高められるか
 費用とサポート 導入費用や月額料金は予算内に収まるか
職員向けの活用研修やサポート体制はあるか

ポイント1:堅牢なセキュリティ対策が施されているか

一つ目のポイントは、市民の個人情報や機密データを守るためのセキュリティ機能が備わっているかです。自治体が扱う情報は非常に秘匿性が高く、万が一でも外部への漏洩は許されません。入力したデータがAIの学習に二次利用されない仕組み(オプトアウト機能)を持つサービスを選ぶ必要があります。また、行政専用の閉域網であるLGWAN環境から安全に接続できるかどうかも重要な判断基準です。国内のデータセンターを利用しているサービスであれば、より安心して導入を進められます。

ポイント2:行政特有の業務に合わせたカスタマイズが可能か

二つ目のポイントは、自庁の業務フローや独自のルールに合わせて柔軟に設定を変更できるかという点です。一般的な生成AIは幅広い知識を持っていますが、特定の自治体の条例や過去の答弁内容までは把握していません。そこで、独自の内部資料を学習させて回答を生成する「RAG(検索拡張生成)」という技術に対応しているかが鍵となります。複雑な行政手続きのマニュアルを読み込ませ、職員の質問に正確に答えさせるような使い方ができます。専門用語が多い業務においても、カスタマイズ性が高いツールであれば即戦力として大いに活躍するでしょう。

ポイント3:費用対効果が高く継続しやすい料金体系か

三つ目のポイントは、限られた予算の中で無理なく運用を続けられる料金設定になっているかという点です。生成AIの利用料金は、アカウントごとの課金や利用したデータ量に応じた従量課金など、サービスによって大きく異なります。全庁的に導入する場合、利用者が増えるごとに費用が膨れ上がってしまう料金体系では、継続的な運用が困難になる可能性があります。定額制でアカウント数が無制限のプランなど、コストパフォーマンスに優れたサービスを選びましょう。まずは一部の部署で無料トライアルを試し、費用に対する業務削減効果をしっかり測定してから本格導入へ進むことをおすすめします。

まとめ

この記事のポイントを振り返ります。

・生成AIの導入は、人手不足の解消、住民サービスの向上、データに基づく政策立案など、自治体にとって多くのメリットをもたらす。

・導入にあたっては、セキュリティの確保、ハルシネーションへの対策、職員のリテラシー向上といった課題への対処が必要。

・横須賀市や山形市などの先行事例を参考にしつつ、ガイドライン策定やスモールスタートといった適切な手順を踏むことで、リスクを抑えながら効果的に導入を進められる。

生成AIは、自治体業務のあり方を大きく変える可能性を秘めたツールです。まずは身近な業務での活用から検討を始め、持続可能な自治体運営の一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。

自治体における生成AI活用の事例として、住民からの問い合わせ対応の自動化が広がっています。AIチャットボット「FirstContact」は、社内ドキュメントを読み込ませるだけで自動回答を実現でき、初期費用0円・月額2,980円〜と低コストで導入できます。シナリオ作成は不要で、最短即日の運用開始も可能です。まずは無料の資料をダウンロードしてご確認ください。

株式会社バイタリフィについて

本記事を執筆している株式会社バイタリフィはWebやアプリ開発などを中心に顧客のDX化を支援し、 2025年9月で20周年を迎えました。多くのお客様、関係者の皆様に支えられながら、こうして20年間に渡り物づくりに携わる事ができた事、大変感謝申し上げます。

20周年を迎えた当社は新たに「生成AI」のバイタリフィとして再出発しています。

  • コストパフォーマンスに優れるチャットボット『FirstContact』について、シナリオ型と生成AIをハイブリッド利用できるように製品をバージョンアップ(成果と費用、期待値のバランスに優れた新しい生成AIの活用方法です)
  • これまで利用してきた基幹系システム、もしくはWebやアプリに “生成AI機能を追加して” さらなる業務効率化を推進する
  • 「画像生成AI(トラム社)」「ECレコメンドAI(サンクユー社)」「セキュアGAI(スクーティー社)」などの様々なAIソリューションを用い、バイタリフィグループ全体で顧客のAI化をサポート

これからもバイタリフィはお客様をAIソリューションで支え、変化の激しい現代を生き残れる会社となれるよう、しっかりサポートさせて頂きます。

生成AIチャットボット「FirstContact」

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株式会社バイタリフィ マーケ担当

株式会社バイタリフィは生成AI活用したSaaS/Web/アプリ/基幹システムの開発会社です。2025年9月で20周年を迎えました。今後もお客様、代理店様、協業会社様と共にDX化をサポートしていきます。